「在日」とは、「在日朝鮮人」を意味することばであり、時代的にいうと、1970年代なかばに「在日を生きる」という意味で、積極的に使われ出したことばである。1945年8月の日本の敗戦/朝鮮の解放以後、「在日」が歩んできた路程は、日本のレイシズムと南北分断の持続によって大きく規定され、きわめて苛酷で苦痛に満ちたものであった。しかも今日、日本の差別的状況は深刻化し、ヘイトスピーチの増殖にみられるように、息苦しくなるばかりである。そうしたなかで、「在日」、とくに若い世代は、不安に満ちた日常性を強いられ、希望に満ちた明日への抱負を持ちにくくなっている。
一方で国際化、グローバル化が語られながら、他方で今までにない孤立と閉塞を強いられる矛盾した状況のなか、連帯とか、友好とか、共生・共存が謳われはするが、それらはややもすれば空虚な、中味のないことばに堕しがちである。民主主義とか、人権、平和といった言葉も重要であるが、「在日」にとってはなお抽象的なものに聞こえる。ジェンダーの問題を含めて、「ともに生きる」とは「ともに闘う」ことが前提であり、そのためには外の世界を知るとともに、内なる矛盾を凝視する勇気と智恵が求められる。何よりも、透徹した歴史認識を確保することが欠かせない。
雑誌『抗路』はこうした状況のなかで、諸先輩の遺志を引き継ぎながら、「在日」をとりまく一切の仕組みを糾す力学をはぐくんでいき、「ともに生きる」未来を模索しようとするものである。『抗路』は抗いつつ、明るい未来を信じて生きる路である。それは「在日」の歴史的使命であり、それは多くの人たちと手を携えていくときに初めて可能なことである。気負い立つことなく、しなやかに、微笑みを忘れずに、歩んでいきたい。
2015年8月15日
[編集委員] 尹健次 文京洙 趙博
発行◎抗路舎 〒544-0032 大阪市生野区中川西2-15-9
発売◎図書出版クレイン
在日総合誌『抗路』第11号 NEW 2023年12月1日 刊行 定価 本体1500円(+税)/ A5判 230頁 ネット購入→Amazon 特集:「在日」メディア史を語る(趙秀一、座談会 「在日社会とメディア」(佐藤信行、朴一、伊地知紀子、森類臣、孫片田晶)、廣瀬陽一、森類臣、文京洙、崔盛旭、梁仁實、趙博、金鍾太) 小特集:「世界の中の『在日』」(キム・スギ、シャロン・ユン、鄭聖惠、李眞惠、韓光勲、金聖雄、山口祐香) 石丸次郎、金竜介、愼民子、寺脇研、角岡伸彦、他、多彩な執筆陣による充実のエッセイ・論考・詩・短歌・書評・映画評。 |
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在日総合誌『抗路』第10号 2022年12月20日 刊行 定価 本体1500円(+税)/ A5判 225頁 ネット購入→Amazon 特集:「在日」の見取図(鵜飼哲、趙博、高柳俊男、金敬黙、曺美樹、鳥井一平、座談会「バックラッシュ時代を生きる」[文京洙・尹健次・辛淑玉・姜信子・金敬黙]) 小特集①:在日と老い(山下英愛、金泰明、魁生由美子) 小特集②:古代史を考える(李成市、松浦峻大) 安田菜津紀、殿平喜彦、金明弘、金鍾太、朴文順、岸野令子、他、多彩な執筆陣による充実のエッセイ・論考・詩・短歌・映画評・書評。
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在日総合誌『抗路』第9号 2021年12月24日 刊行! 定価 本体1500円(+税)/ A5判 230頁 ネット購入→Amazon 特集:「在日」と市民運動(外村大・玄武岩・佐藤雪絵・野元優花・金 鍾太・座談会「新・猪飼野事情」) 小特集① 「在日」の歴史認識(李成市・堀内稔・朴洪実・金浩・崔紗華・金敬黙) 小特集② 差異と差別(趙博・李宇海・藤野豊・金貴粉) 趙蘭水、文京洙、磯貝治良、兪渶子、白凛、尹健次、鄭龍寿、金重明、凛七星、丁章、他、多彩な執筆陣による充実のエッセイ・論考・小説・詩・短歌・書評。
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在日総合誌『抗路』第8号 2021年3月11日 刊行! 定価 本体1500円(+税)/ A5判 240頁 特集:「在日」の家族・世代(鄭暎惠・朴沙羅・岡本朝也・浮葉正親・李達富) 小特集① おんなの語り(崔善愛・朴和美・伊地知紀子) 小特集② 自分史の試み(趙博・方政雄・朴成柱・李喆雨・鄭琪満) 石純姫・三村光弘・丸一俊介・金泰泳・戸田郁子・文京洙 ・金弘明・尹健次・秋林こずえ・都相太、他、多彩な執筆陣。
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在日総合誌『抗路』第7号 ★むのたけじ民衆ジャーナリズム賞・優秀賞受賞 2020年7月 刊行! 定価 本体1500円(+税) A5判 248頁 特集:越境する「在日」 小特集① 新型コロナウイルスと日韓関係 小特集② 1950年代を考える 今号も多彩な執筆陣で「在日」と「日本社会」、その歴史と現在を考えます。 |
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在日総合誌『抗路』第6号 定価 本体1500円(+税) A5判 214頁 特集:「在日」の新時代 小特集① 三・一運動 100年 小特集② 『82年生まれ、キム・ジヨン』 1年ぶりの『抗路』第6号。今号も、ジャーナリスト・研究者・ミュージシャンらが論考・インタビュー・詩・小説など多彩な表現で、これからの「在日」「日本社会」を考えるためのテーマを掘り下げる。 |
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在日総合誌『抗路』第5号 定価 本体1500円(+税) A5判 232頁 特集 在日の1948年 小特集 明治150年に思う 特集は「在日」の1948年。1948年を韓国現代史のみならず、戦後体制の始発点として取り上げる。小特集は「明治150年に思う」。またぞろ明治幻想が跋扈する、ここ日本の今を、「在日」「アイヌ」「沖縄」「部落」の視点から掘り返す。 |
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在日総合誌『抗路』第4号 定価 本体1500円(+税) A5判 特集「在日」のクニ 小特集 激動する朝鮮半島 特集は「在日」のクニ。小特集として「激動する朝鮮半島」を収録。自明のものとしてあると幻想する「国」という概念を、在日の場所から問い返す。「国」「邦」、いや「クニ」。 |
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在日総合誌『抗路』第3号 定価 本体1500円(+税) A5判・ソフトカバー・246頁 特集「在日」の記憶 特集は「在日」の記憶。出自・来歴の自覚に始まる在日であることの確認を、著者それぞれの体験から論述する。 |
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在日総合誌『抗路』第2号 定価 本体1500円(+税) A5判・ソフトカバー・248頁 特集 在日の多様性 「在日」の世界を知ることは、日本を知ること。「在日コリアン」は、ここ日本社会において、どのような存在として生きているのか。そしてある場合には、生きることができなかったのか。その多様な生のあり方をそれぞれの分野で活動する人々が力強く論述する。今号も論考・インタビュー・鼎談・詩・小説など、多様な表現が誌面を飾る。 |
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在日総合誌『抗路』創刊! 定価 本体1500円(+税) A5判・ソフトカバー 232頁 いま「在日」はどのような場所に置かれているのか。「在日」はどのような状況に取り巻かれているのか。それと、どのように向き合っていけばよいのか。「在日コリアン」だけでなく、この社会に生きるすべての人たちと共に考えたい。 在日コリアンは存在し続ける。その存在を忘れ、ないがしろにしようとする勢力に抗うために、いま何が必要なのか。ともに考えるための材料を提供するために。 |